特殊建築物定期報告
赤外線サーモグラフィカメラによる外壁調査
平成20年4月1日から建築基準法に基づく定期報告の制度は変更になりました。
国土交通省は、マンションの築10年目ごとを目安に大規模な修繕工事を行うように推奨しています。そのような事から、特殊建築物などは新築の竣工および外壁改修から10年ごとの定期報告調査が必須という制度に変わりました。
そもそも共同住宅が完成した後は、維持保全に努め状況を定期に調査・報告しなければならないという責務が所有者様・管理者様にはありましたが、今回の場合は報告義務が課されたということで、当然ながら当該制度にも報告義務違反などによる罰則(法101条により100万円以下の罰金)は存在します。
特に定期報告に含まれる、外壁のタイル・モルタルなどの経年劣化による浮き状況(浮きがないか)を、赤外線サーモグラフィ(サーモグラフィー)カメラを使用しての外壁調査方法は従来からある調査方法ですが、この制度ができてからは特殊建築物定期報告としての利用数が増加しております。
短期工期・低価格で、修繕積立金を有効活用。
修繕積立金をできる限り有意義に利用したいと考えるのは当然のことです。
大規模改修工事・大規模修繕工事が数年後に控えており、それまではできるだけ出費を削減したいのだけれど、特殊建築物定期報告の
制度ができたために直近で調査する必要が生じ、予算のやりくりで管理組合様を悩ます大きな要因になっているという声を良く聞くよ
うになりました。もちろん特殊建築物定期報告の制度自体は住民の安全を第一に考えた良い制度なのですが、足場を組むような大がか
りな調査は予算の関係でできるだけ削減したいと言うのが本音かと思います。
そこで、注目されているのが赤外線サーモグラフィ(サーモグラフィー)カメラによる外壁調査です。足場の必要がなく工期自体も短
期間で済みます。そのために費用を削減することが可能となり、修繕積立金からの支出を削減し、数年後に控える大規模改修工事・大
規模修繕工事に予算が足らなくなるかもという不安を未然に防ぐことが可能となりました。
赤外線サーモグラフィカメラを利用した建物の外壁調査・外壁診断
赤外線サーモグラフィカメラを利用した外壁調査・外壁診断には従来の打診調査と違い以下のようなメリットがあります。
・足場やゴンドラを設置する必要がない
・一度に広範囲の調査が可能なので、工期が短期間
・データとして記録するので、調査日および後日にも再確認しながら診断結果が出せる
・画像データを取得できるので浮き部位の位置や形状が把握できる
外壁の剥離診断における原理
建物外壁の仕上げモルタルやタイルが剥離すると、その裏面にわずかな空気層ができる。
密閉された空気層は大きな断熱性を持つので、仕上げ材が剥離している部分は、外壁表面と躯体との熱伝導が小さくなる。
日射が当たったり外気温が高くなり、外壁表面温度が上昇するときには、剥離部の方が健全部より高温となり、日射が減少したり外気温が低くなり、壁面温度が下降するときには、逆に剥離部の方が健全部と比べて低温となる。
この温度差を熱画像から判別することにより剥離部を抽出できる。
赤外線サーモグラフィカメラを用いた調査の諸条件
・日射が当たる場所のみ(※基本的に北面の精度は著しく低い)
・天候は晴れまたは曇り(※曇天で日中の気温差が5℃未満の場合は不可)
・風速は5未満
・角度は45°以内
・撮影位置に樹木や視界を遮るものがあると測定不可
・凹凸部位やアールがある部位は測定不可または精度が著しく落ちる
・光沢の強いタイルの場合は精度が著しく落ちる
・建物ごとに適切なカメラやオプション選びの知識が重要
赤外線サーモグラフィカメラでの外壁診断事例
諸条件を満たし、適切な知識と適切なサーモグラフィカメラで撮影することにより、浮いている部位が顕著に判定できます。
最新のドローンを用いた建物の外壁調査・外壁診断
従来のサーモグラフィカメラを利用した外壁調査・外壁診断では、カメラ角度の問題で高層物件への対応が難しいという問題がありました。ドローンを使用することによって、高層の建物でも角度を気にすることなく安定した撮影することが可能です。
ドローンを用いた外壁診断事例
上空から撮影することで、従来の調査では難しい高層部なども、理想の角度や距離で調査が可能となりました。